2015.10.09
なぜ、伝統建築が作られなくなったのか?
一つには、建築の法律があると思います。
現在の建築基準法は、昭和25年に作られました。
昭和25年といえば、まだ戦後の時代でアメリカのGHQの統治時代です。
昭和27年にサンフランシスコ講和条約で、戦後は終わりますが、作られた建築基準法はアメリカの法律を参考に作られたもので、日本の独特な気候風土には違和感があります。
もともと、日本とは気候も災害も違うアメリカ。
そのアメリカの建築基準を基にしているため、日本独特の地震と湿度については対応していませんでした。
その為、問題が起きたら改正を繰り返す、という形で現在まで至っています。
これまでも幾多の改正があり、今後も不具合があれば、改正また追記されて、時代に合わせた法律になってゆきます。
古来から続く日本の伝統建築は、基礎の上に柱を立てる構法で、地面の揺れを建物に全て伝えない「半免震構造」の思想を基にして、建物が揺た時に壁が壊れることによって「地震力」を吸収するようになっています。その後の改修考えて、主要な部材には影響が出にくいように考えられていたんですね。
つまり、地震時には揺れることを許容しています。
対し、現在の基準法では、地面から基礎、建物と一体化して、「地震力に抵抗する」ことを基に、構造用金物や構造用パネルを使い、建物全体を固める思想です。
1995年の阪神大震災以後、建築基準法の耐震性能の基準を改正し、現行法規に基づき建てられた建物は、一応安全とされています。
(※一応と書いたのは、建築基準法が最低基準を定める法律なので、人命を助けることを最優先とします。 そのため、耐震基準の解釈に阪神大震災程度の地震では、建物は壊れても人が避難する時間を稼ぐ壊れ方を求める、とする意見もあるからです。)
現行の法律では、日本古来の先人の知恵が詰まった伝統構法は、建てられなくなってしまいました。
それによって、職人さんの技術の継承が途絶えてゆくのは、日本文化の面でも非常に残念なことと思います。
今では、一部の重要文化財や伝統建築物を改修する業者の方々が、私企業の中で継承されるだけとなりました。
日本の伝統建築に対しても法で認められるように働きかけている団体もありますが、現行の法律では日本古来の伝統建築の手法と構造的な考えを継承していくには、改修という方法しかないのも、残念なことですね。
より多くの人が、古来から受け継いできた伝統建築の素晴らしさを知って、継承していけるように今後も情報発信をしていきたいと思います。